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  • 加齢性黄斑変性症

    ご高齢の方に多く、視力の低下や歪んで見えるようになる症状が生じる疾患です。光を感じ取る網膜やその周囲にできた新生血管と呼ばれる悪い血管からの出血やむくみなどが原因となります。両目で見ていると片方の目がカバーしてしまい、症状に気づきにくいことがあります。

    時々片眼を隠して問題無く見えているかを確認して、異常を感じれば受診をして下さい。

  • 脳腫瘍

    はじめに

    脳腫瘍というと、「不治の病」と思われるかもしれませんが、実際はそうではないことが大半です。近年、ナビゲーションシステムをはじめ、様々な手術補助機器が導入されて、より安全かつ確実な手術が可能となりました。悪性脳腫瘍(とくに悪性神経膠腫)に対する化学療法(薬物療法)の効果は、15年前と比較して向上してきています。

    このページでは、脳腫瘍と診断された患者様やご家族、お知り合いの方々などのために、脳腫瘍について簡単にわかりやすく解説いたします。

    なお、なるべく専門用語を避け、平易な文章を心掛けていますので、学会で議論になっているような難しい問題には深く踏み込んでおりません。また、当院では設備や人員などの都合上、最新の専門的な治療は大学病院等の専門施設に依頼することがございます。あらかじめご了承ください。

    総論

    1.脳腫瘍の種類と頻度

    頭蓋内に発生する腫瘍を脳腫瘍と呼びますが、脳腫瘍には、頭蓋内の組織から発生する「原発性腫瘍」と、頭蓋外の悪性腫瘍(癌)から頭蓋内へと転移する「転移性腫瘍」があります。

    発生頻度は、それぞれ 1万人に1人程度 といわれています。

    2.原発性脳腫瘍の種類

    原発性腫瘍のうち、最も多いのはグリオーマ(神経膠腫「しんけいこうしゅ」)です。良性から悪性まで、タイプは様々です。

    次に多いのが髄膜腫(ずいまくしゅ)で、以下、下垂体腺腫、神経鞘腫、頭蓋咽頭腫などが続きます。

    成人に多いのが、神経膠腫(とくに神経膠芽腫)、髄膜腫、下垂体腺腫、神経鞘腫、転移性脳腫瘍などで、小児に多いのが、髄芽腫、頭蓋咽頭腫、胚細胞腫などです。

    各論では、神経膠腫(グリオーマ)、髄膜腫、胚細胞腫について取り上げます。

    3.脳腫瘍の診断

    1)症状

    けいれん発作や、神経症状(片麻痺、言語障害、視野障害、聴力障害、精神症状など)、早朝時の頭痛や嘔吐などが比較的多い症状です。歩行時のふらつきやめまい、物忘れなどの比較的軽微な症状のこともあります。もし、症状に改善がみられず、徐々に進行するようであれば、一度、以下のような画像検査を受けられてください。

    2)画像診断

    画像検査の中心は、頭部CTあるいはMRIです。

    CTは、検査時間が数分と短く、大抵、受診したその日に検査ができます。X線を照射し、画像がMRIよりも粗く、血管の病変は診断できないといった限界はありますが、スクリーニングとしては非常に便利です。

    一方、MRIは、検査時間が約30分と比較的長く、通常、受診したその日には検査ができず予約制となりますが、X線による被爆がなく、いわゆる精密検査であり、画像解像度が高く、小さな病変や血管病変も見つけることができます。

    CTかMRIのどちらを最初に行うかは、症状や診察結果などの状況により変わってきますので、多くの場合は診察した医師の判断で決定されます。

    また、造影剤を点滴してCTもしくはMRIを撮影することによって、腫瘍の中には造影剤が取り込まれて写るため、確定診断に役立ちます。まずは造影剤を使用せずにCTもしくはMRIを撮影した後に造影剤を使用して撮影することがよくあります。

    3)組織診断、遺伝学的診断

    画像診断で脳腫瘍の存在が疑われたときに、画像だけでほぼ診断がつく場合もありますが、確定診断は実際にその腫瘍組織を取り出して行います。顕微鏡で直接見て行う診断を組織診断といい、病理専門医が診断を行います。また、近年は遺伝子異常の場所や組み合わせと腫瘍の性質との相関が次第に解りつつあるため、取り出した腫瘍組織の遺伝学的検査・診断を行う方法が併用されるようになり、この場合は大学または専門業者に依頼します。

    腫瘍組織の取り出し方として、ほんの一部をつまんで取り出す手術を「生検術」といいます。脳の深部に腫瘍がある場合や、少しでも傷つけると後遺症が出てしまう重要部位(症候発現部位といいます)が腫瘍周囲に存在する場合など、腫瘍を一度に全部摘出することが難しいときに生検術を行い、摘出した組織により確定診断を行います。

    4.脳腫瘍の治療

    1)手術

    脳腫瘍は、正常な脳細胞ではない「不要な異物」ですから、手術で取り除くのが最も合理的な方法です。脳は、頭蓋骨という容器の中に入っていますので、脳腫瘍がどんどん大きくなってしまうと、正常な脳の行き場がなくなり、圧迫されて様々な症状が出現するのです。ですから、正常な脳を助けるためにも、脳腫瘍を手術で摘出することが重要です。

    もっとも、脳腫瘍を完全に摘出することが難しい場合もしばしばあります。

    完全に摘出しようとすると、周囲の正常な脳や神経組織を犠牲にしてしまうことがありますし、また、解剖学的に全摘出が不可能な場合もあります。

    したがって、原則として全摘出を目指しますが、場合によっては部分摘出あるいは一部摘出(生検術)にとどめて組織診断を行い、その診断結果に応じて以下のような後療法を追加することがあります。

    2)放射線療法

    手術の後に続いて行う後療法の代表的なものです。通常は、取りきれなかった腫瘍を縮小あるいは消滅させたり、再発を予防するために行ったりしますが、手術が不可能な場合には最初に施行されることもあります。

    放射線を、腫瘍を含んだ脳に照射すると腫瘍を栄養する血管が次第に消滅し、腫瘍は壊死に陥ります。腫瘍組織自体も、腫瘍細胞の分裂が抑えられて壊死に陥るようになります。

    近年では、ガンマー線を腫瘍組織に集中照射する「ガンマーナイフ」や、X線を分割して集中照射できる「サイバーナイフ」による定位放射線治療が比較的多く行われるようになりました。また、照射野内の放射線の強度を変化(変調)させて、治療に最も有効な方法で照射を行う強度変調放射線治療(IMRT)という方法もあります。

    3)化学療法

    薬剤(抗悪性腫瘍薬)による治療法です。注射と内服が中心ですが、近年は、術中に腫瘍摘出腔に貼り付けるものもあります。腫瘍のタイプ(病理組織や遺伝子異常)により薬の効果が異なりますので、最も効果が高まるように患者様個人個人に合わせていろいろな薬を使い分けたり、複数の薬を組み合わせて使用したりします(個別化治療)。

    ただ、薬剤には通常、副作用が出現する可能性があります。主なものは、嘔気・嘔吐、食欲不振、脱毛、白血球減少(感染しやすくなる)、血小板減少(出血しやすくなる)などです。

    4)免疫療法

    人間の免疫反応(体内異物を排除しようとする反応)を応用した治療法です。インターフェロンの注射などが以前から行われてきましたが、近年はとりわけ悪性腫瘍細胞を攻撃する免疫力を高めたり、腫瘍が成長するために必要な血管新生を抑制する免疫を高めたりする方法もあります。

    5)その他

    温熱療法や遺伝子治療、ウイルス療法などの他、種々の先進治療が研究段階にあります。

    われわれは、多くの場合に以上の方法を組み合わせて治療を行いますが、施設や機材が無いために当院では行うことができない治療法(ガンマーナイフ、サイバーナイフ、IMRT、免疫療法、遺伝子治療など)が適している場合もあります。そのような場合には必要に応じて患者様・ご家族と相談の上、協力他施設に紹介の上で治療を受けていただいております。治療後は通常、当院と、治療を受けられた施設の双方で経過観察を行います。

    各論

    今回は、神経膠腫(グリオーマ)、髄膜腫、胚細胞腫について簡単に解説いたします。

    1.神経膠腫(グリオーマ)

    1)特徴

    脳実質のグリア系細胞から発生する原発性腫瘍です。周囲の正常脳組織の中へと浸潤しながら発育するという特徴があります。したがって、すべてを摘出するのは困難な場合があります。

    2)分類

    比較的良性のものから悪性のものまで、タイプは様々です。

    WHOの分類に従って、悪性度をグレード1から4までの4段階で評価します。グレード1が最も良性で、グレード4が最も悪性となります。

    • 主なタイプのまとめ
      • 星細胞腫・乏突起膠腫:比較的良性。
        成人は大脳、小児は小脳に多い。グレード1または2。
      • 悪性(過形成性)星細胞腫等:悪性。成人の大脳にできる。グレード3。
      • 神経膠芽腫:最も悪性。成人の大脳にできる。グレード4。
      • 髄芽腫:小児の悪性腫瘍。小脳にできる。グレード4。
      • 上衣腫:良性と悪性がある。脳室の上衣細胞から発生。
    3)予後

    統計により異なりますが、発症してから5年後の生存率(5年生存率)をみてみますと、良性であれば60~70%以上、悪性の場合は10~30%程度とされています。

    予後を左右する因子として、腫瘍組織型(分裂能力など)、染色体や遺伝子異常の組み合わせ、年齢(高齢であるほど予後不良)、術前の症状(軽いほど予後が良い)、手術による摘出率(摘出率が高いほど予後が良い)などがあります。

    また、最初は良性であったものが、後に悪性に変化してしまうこと(悪性転化といいます)もあります。この点が、グリオーマに対する治療の難しさの1つの原因となっています。

    2.髄膜腫

    1)特徴

    髄膜という、脳の表面を覆う膜から発生する腫瘍です。女性に多く、女性ホルモンとの関係があると考えられています。

    神経膠腫(グリオーマ)とは異なり、脳の中にしみ込むように増大するということはまずありません。2cm以下の小さいものであれば、脳を圧迫することは少なく、通常、無症状です。脳ドックなどで偶然発見されることも増えてきましたが、通常は良性ですので、小さければそのまま外来で経過観察することも可能です。ただ、血管が豊富なことが多く、しばしば徐々に増大することがあります。

    当院で最も多く治療されている脳腫瘍です。

    2)症状

    腫瘍が大きくなり、脳や神経を圧迫するようになると、頭痛や嘔吐、手足の麻痺、視力障害、聴力障害、めまい、てんかん、歩行障害などといった症状が出現することがあります。症状がある場合には、症状の回復と、さらなる進行を食い止める(最も進行した場合は救命の)ために、治療を検討します。

    3)治療法

    治療法は、原則として手術です。通常、放射線治療や化学療法などは行いません。

    手術は、腫瘍の場所、大きさ、患者様の年齢などを考慮して、どのように行うべきか、最善の方法を検討します。血管撮影を行い、腫瘍を栄養している血管を閉塞させることもあります。通常は良性ですので、完全に摘出できれば再発することは極めて少なく、予後は良好です。部分的な摘出でも、症状が回復して予後は良好なことが多いです。

    ただ稀に、短期間で再発・増大してしまう悪性タイプ(過形成性など)があります。組織診断で判明します。その場合には、再手術や放射線治療の追加を検討します。

    3.胚細胞腫

    1)特徴

    胚細胞腫とは、生殖器(精巣、卵巣)由来の腫瘍群の総称ですが、なぜか脳内に原発して発生することがあります。先天性であり、脳内では松果体(しょうかたい)という脳の真中後部や、トルコ鞍上部(脳の真中前方寄り)にできやすく、脳腫瘍全体の3%程度を占めています。約7割の人が、未成年のうちに発見されます。男性が70%以上です。組織像が多彩で、様々なタイプの腫瘍があります。約半数は放射線治療が奏功するため良性と言うこともできますが、未熟で悪性な腫瘍もあります。

    2)症状

    腫瘍の発生場所により、症状は異なります。

    松果体に発生すると、水頭症を合併して頭痛や意識障害を起こしたり、上方注視麻痺といった眼の症状が出やすくなったりします。鞍上部に発生すると、尿崩症(尿が1日で3リットル以上たくさん出る状態)、視力・視野障害、下垂体ホルモン障害などが出現することがあります。

    3)治療法

    脳腫瘍なので、手術して完全に摘出できればよいのですが、胚細胞腫の場合、手術をすると腫瘍細胞を周りに散らばしてしまい、将来的に脳内や脊髄内に腫瘍細胞が広がってしまう(播種といいます)可能性が高くなります。もちろん、他のタイプの脳腫瘍(たとえば、グリオーマなど)との鑑別が難しい場合には、手術や生検術を行い、組織診断を行う必要があるかもしれませんが、手術や生検術にも一定のリスクを伴います。幸い、胚細胞腫は、放射線治療と化学療法の両者を併用することで治療が奏効することが多いので、手術を行ったうえで放射線療法と化学療法を行うのか、手術をせずに放射線療法と化学療法を行うのかについては、個々の患者様ごとに最善の治療法を検討する必要があるでしょう。

    予後は、最も多いタイプのgerminoma(ジャーミノーマ)は、10年生存率が80%以上と良好ですが、胚細胞腫の中には悪性タイプもあります。腫瘍タイプごとに放射線量・範囲と抗がん剤の種類・投与量を組み合わせて治療を行うこととなります。

    おわりに

    もし、脳腫瘍に関するご相談や、診察や治療をご希望の場合には、当院脳神経外科外来をお気軽にご受診ください。
    誠心誠意、対応させて頂きます。

    (文責:福永 篤志)

  • 白内障

    眼内でレンズの働きをしている水晶体に濁りがでてくる疾患です。年齢と共に生じてくる事が殆どですが、一部の全身疾患やお薬、怪我などが原因となることもあります。

    目のかすみ、ぼやけが代表的な症状ですが、初期には眩しさ等の症状もあります。
    明るい屋外に出たり、西日や車のヘッドライトが当たった時など強い光の中で特に見えづらくなる事もあります。

    進行予防のための点眼薬もありますが、改善には手術が必要となります。

  • 脳梗塞

    はじめに

    脳梗塞について、主に患者様や一般の方々向けに、わかりやすく解説させていただきます。

    脳梗塞の予防、あるいは再発予防に役立てていただければ幸いです。なお、超急性期の脳梗塞で血管内治療を要する場合については、「脳血管内治療」の解説をご参照ください。

    脳梗塞とは?

    脳梗塞とは、脳内や頸部の血管がつまってしまい、脳への血流が遮断されることによって脳細胞が死滅し、その脳細胞が司っていた機能が低下あるいは消失してしまう病気です。

    脳梗塞には、主に動脈硬化のために血管の内腔が細くなっていたところへ血栓ができて血管がつまってしまうという「脳血栓」と、主に心房細動という不整脈のために心房内に比較的大きな血栓(塞栓といいます)ができてそれが脳内あるいは頸部の動脈に飛んでしまい詰まってしまうという「脳塞栓」の2つのタイプがあります。(その他特殊なタイプや分類不能なタイプもあります。)

    脳梗塞のタイプ

    1. 脳血栓

    主に動脈硬化のために血管の内腔が細くなっていたところへ血栓ができて血管がつまってしまうタイプ。

    2. 脳塞栓

    主に心房細動という不整脈のために心房内に比較的大きな血栓(塞栓といいます)ができてそれが脳内あるいは頸部の動脈に飛んでしまい詰まってしまうタイプ

    血栓のメカニズム

    基本的には血栓(塞栓も含む)ができなければ脳梗塞にはなりません。つまり、血栓予防が脳梗塞予防となります。

    では、なぜ血栓ができてしまうのでしょう?

    人間の血液は、命を守るために凝固する働きがあります。怪我をして出血したら、かすり傷程度であれば自然に固まって血は止まります。これは、血液が血管外に出て空気に触れたこと等によって直ちに凝固システムが働くからです。血液は血管の中を流れていても、しばしば固まってしまい小さな血栓ができますが、血管を詰めてしまわないように、固まった血栓が再び溶け出す現象(線溶現象といいます)が起こります。このように血液は凝固と線溶をバランスよくコントロールされながら流れているのですが、このバランスが凝固優位に傾いてしまうと血栓ができやすくなってしまいます。

    血栓形成のメカニズムは、ウィルヒョウの3つの特徴(Virchow’s triad)という考えが古くからよく知られています。血流の停滞、凝固機能の亢進、血管内皮の傷害の3つが血栓の形成に影響を及ぼすと考えられています。

    ウィルヒョウの3つの特徴

    • 血流の停滞

      長時間同じ姿勢を続けるような状態。例:寝たきり、術後の安静、車中泊など

    • 凝固機能の亢進

      血液疾患、脱水、がん、妊娠、高齢など

    • 血管内皮の傷害

      けが、手術、カテーテル検査・治療、動脈硬化(プラーク形成)など

    この考え方は、もともと深部静脈血栓症や肺塞栓症(いわゆるエコノミークラス症候群)のような静脈血栓症(静脈が血栓で詰まってしまう病気)を念頭において考えられていたものですが、脳梗塞のような動脈が詰まってしまう病気にも当てはめて考えることができます。

    脳梗塞の経過と症状

    1. 脳血栓の典型的な経過

    突然、片麻痺、呂律障害、歩行障害、手足のしびれ、失語などの症状が出現しますが、症状が比較的軽く歩けたりするのでそのまま経過をみてしまうことがあります。

    しかしながら、一晩寝ると、翌朝にはさらに症状が悪化・進行するので、やむを得ず救急要請となります。脳血栓の症状は、脳梗塞の場所によって変わりますが、後述する脳塞栓よりも比較的軽いのが特徴です。

    ただし、もし救急要請せずにさらに自宅で様子を見てしまうと、日ごとに症状が悪化し、最悪の場合、生命の危険があるので、異変を感じた時点でなるべく早く病院を受診するようにしてください。

    2. 脳塞栓の典型的な経過

    脳血栓と同様に、突然、片麻痺、呂律障害、歩行障害、手足のしびれ、失語などの症状が出現しますが、症状は比較的重く、手足が全く動かなくなったり、言葉も全くしゃべれなくなったり、さらには意識状態も悪くなったりすることがあります。

    理由は、塞栓が比較的太い動脈を詰めてしまうからです。

    検査・診断

    患者様の症状と経過から脳梗塞が疑われた場合には、頭部MRI(またはCT)検査を行います。MRIは、発症から間もない急性期の脳梗塞を写し出すことが可能です。

    また、同時にMRAという血管のみを写し出す画像も撮影できるので、比較的太い血管であればどの血管が詰まったのか、あるいは狭窄して詰まりそうなのかを見つけることができます。

    これらの画像検査の結果や、心電図の所見(不整脈の有無)、血液検査の結果などを総合的に評価して、脳梗塞とそのタイプを診断することができます。

    治療法

    発症から4時間半以内であれば、rt-PA(recombinant tissue plasminogen activator)療法という、血栓を溶かす比較的強い薬を点滴する治療法を行うことができます。ただし、全例に行えるというわけではなく、脳出血などの副作用が懸念されるため、薬を使用できるかの判断は脳卒中学会が作成したガイドラインに従って慎重に行います。

    比較的太い血管が詰まってしまった場合には、血管内治療により詰まった血栓をカテーテルで吸い出すという血栓回収術をさらに行うこともあります。詳細については「脳血管内治療」の解説をご覧ください。

    そのほかの治療法として、抗血小板薬や抗凝固薬(いわゆる血液サラサラ薬)を1~2週間程度点滴することによって、脳梗塞の進行を食い止めます。患者様の状態に応じて、脳保護薬や乳酸リンゲル液も追加で点滴することがあります。また、抗血小板薬や抗凝固薬を並行して内服していただくこともあります。

    上記のような点滴・薬物療法のほか、リハビリテーションも早期に開始いたします。起立・歩行運動、手の巧緻運動、言語・嚥下運動、高次脳機能などについて患者様の症状に合わせて行います。

    点滴が終了したら、脳血栓の患者様は抗血小板薬を、脳塞栓の患者様は抗凝固薬を内服していただきます。脳梗塞再発予防が目的ですから、抗血小板薬または抗凝固薬は、原則として一生飲み続ける必要があります。

    脳梗塞再発予防のための内服薬

    • 脳血栓の場合→抗血小板薬
    • 脳塞栓の場合→抗凝固薬

    脳梗塞のタイプによって内服薬が違うことがポイントです。脳血栓と脳塞栓は発症メカニズムが違いますので、飲む薬も違うのが原則です。

    入院期間の目安と退院後の方針

    入院期間の目安は約1ヶ月です。症状が軽く、入院中も症状の悪化や進行がなければ、1~2週間で自宅に退院できることもあります。麻痺などのため自宅への退院が難しい場合には回復期リハビリテーション病院や療養型病院などへの転院をご紹介いたします。

    予防法

    脳梗塞の予防で最も重要なのは、動脈硬化の進行予防です。高血圧や脂質異常症、糖尿病、肥満などの生活習慣病の管理と、喫煙、過度の飲酒をやめることが大事です。

    また、心房細動を指摘された方は、抗凝固薬を予防的に内服することで脳梗塞(とくに脳塞栓)の発症を防ぐことが可能となります。まずは、かかりつけの先生にご相談ください。

    あと、過去に脳梗塞を患ってすでにサラサラ薬を飲んでいる方は、毎日きちんと服用されてください。

    つぎに忘れてはならないのが、脱水予防です。

    脳塞栓について脱水は発症に関与する重要な因子であると報告されています1)

    また、脳血栓でも脱水の有無が脳梗塞の長期予後に強く影響を及ぼす因子であると報告されています2)

    私たちの調査では、午前6~7時には脳血栓が、午後2~7時と午後11~午前5時には脳塞栓が起こりやすいことがわかりましたので3)、就寝前後や起床時における脱水予防対策が重要ではないかと考えられます。

    また、帯状高気圧型の気圧配置パターンの場合、脳塞栓が発症しやすく、その他高気圧型(帯状高気圧型と移動性高気圧型に分類できない高気圧型)の気圧配置パターンの場合には脳血栓が発症しやすいということも報告しましたので4)、そのような気圧配置パターンの日にはあらかじめ脱水に気をつけることも予防策になりうるのではないかと考えられます。

    脱水予防法は、1日三回の規則正しい食事と、適度な水分補給が大事です。ただし、水の飲みすぎは夜中に何回もトイレに起きてしまうばかりでなく、水中毒などを引き起こすこともあるので注意が必要です。また、腎臓や心臓の病気をお持ちの方々は飲水制限があるかもしれないので、必ずかかりつけの先生にご確認ください。

    引用文献

    1)高橋貴美子ら.心原性脳塞栓発症における脱水の影響.脳卒中14: 606-612, 1992. doi: 10.3995/jstroke.14.606

    2)Li SS et al. Dehydration is a strong predictor of long-term prognosis of thrombolysed patients with acute ischemic stroke. Brain Behav 7:e00849, 2017. doi: 10.1002/brb3.849

    3)福永篤志ら.脳塞栓と脳血栓の発症に関する生気象学的検討.日生気誌57(4): 127-133, 2021. doi: 10.11227/seikisho.57.127

    4)Fukunaga A et al. The onset of cerebral infarction may be affected by differences in atmospheric pressure distribution patterns. Front Neurol 14: 1230574, 2023. doi: 10.3389/fneur.2023.1230574

    (文責: 福永 篤志)

  • 慢性硬膜下血腫

    はじめに

    硬膜下血腫とは脳を包む3枚の膜のうち、硬膜という1番外側の膜とくも膜という2番目の膜の間に血液がたまった状態のことです。硬膜下血腫には急性と慢性の2種類があり全く異なる病態です。

    急性硬膜下血腫は交通外傷などの強い外力が頭部に加わった際に生じる出血が原因となり、頭痛や吐き気、意識障害といった症状が急速に出現し、症状によっては緊急開頭手術を要する状態のことです。

    慢性硬膜下血腫は比較的軽微な頭部打撲をきっかけとして、その後数週間程度かけて硬膜下腔に徐々に血液が貯留し、脳を圧迫することで運動麻痺や言語障害、認知症のような症状を起こしてくる状態のことです。

    この項では後者の慢性硬膜下血腫について説明します。

    原因

    前項で述べたように、軽微な頭部外傷が原因となることが多いですが、はっきりしたきっかけがないこともしばしば経験します。リスク要因としては、高齢であること、飲酒、抗血小板薬・抗凝固薬(いわゆる血液サラサラにする薬)内服、血液凝固障害をきたすような疾患にかかっていることなどがあげられます。

    症状

    血腫の量が少ない時点では無症状のことが多いです。血腫が貯留してくると血腫と反対側の運動麻痺や言語障害、認知機能低下といった症状が出現し、徐々に悪化、よく転ぶようになります。比較的若い方に発症すると、はじめに頭痛が出現することがあります。高齢の方でも両側に血腫がたまっている場合には頭痛が主症状となることもあります。

    診断

    頭部CT検査にて硬膜下腔の血腫を確認することで診断することができます。前述の症状があってもCTで硬膜下血腫を認めない場合には脳梗塞などの他の疾患を考える必要があります。

    治療法

    血腫の量が少なく、無症状の場合には外来で経過観察することが多いです。その際は五苓散という漢方薬や止血剤を処方し内服していただきます。

    症状がある方の場合、血腫量が多いことがほとんどで、経過観察をしていては症状が進行し、より重篤な状態となりますので、手術が必要になります。そのため、来院日に入院していただき、ほとんどの場合入院当日もしくは翌日に手術を行います。

    手術の方法

    局所麻酔で行います。

    必要に応じて点滴から鎮静剤を投与し、少し眠った状態で手術を行います。

    血腫がたまっている側の側頭部に約4cmの皮膚切開をおき、直径1cm程の孔をあけます(これを穿頭といいます)。硬膜を切開し、血腫を排出させ、必要に応じて血腫腔内(血腫のたまっているスペース)を洗浄します。その後、ドレナージチューブを留置し閉創します。

    手術所要時間は約30分です。

    両側に血腫がたまっている場合は、1回の手術で両側とも手術を行うこともあれば、症状の原因となっている側の手術のみ行うこともあり、患者さんごとに方針が異なります。

    合併症としては、感染、出血(急性硬膜下血腫など)、術後けいれん、局所麻酔アレルギー、創部のトラブルがあげられます。

    入院期間

    通常、手術後1週間で抜糸を行い、退院可能となります。その間リハビリを行います。

    手術前の麻痺が重度であったなど、リハビリを要する場合には入院期間を延長してリハビリを行います。また、リハビリ病院へ転院してさらに長期間のリハビリを要することもあります。

    再発について

    慢性硬膜下血腫は再発する可能性(10〜20%程度)があります。

    再発の予防のため、五苓散や止血剤の内服をしていただき、退院後も完治するまでは外来で定期的に頭部CT検査を行います。

    再発をした場合、血腫量が多ければ再手術を行うことがあります。再手術は前回の骨の孔を用いて行うことが多いですが、血腫の分布によっては新たに孔を設けて手術を行うこともあります。

    最後に

    慢性硬膜下血腫による症状はほとんどの場合、手術を行うことで改善します。しかし、症状出現からの期間が長くなればなるほど症状改善の可能性が低下します。そのため、特に頭部外傷後数週間で気になる症状が出現した場合にはすぐに受診をするようにしてください。

    (文責:佐々木 正史)

  • 頚椎症性脊髄症・頚椎後縦靱帯骨化症

    頚椎症性脊髄症とは?

    頚椎はドーナッツ型の椎骨が重なるように連なることによって脊柱管というトンネルを構成し、その中に脊髄という重要な神経組織を含有しています。その頚椎の加齢性変化(頚椎症)に伴って変形した骨や肥厚した靱帯が脊柱管内に突出すると、そのトンネルの内径が狭くなってしまい、大切な脊髄が圧迫されてしまいます(脊髄症)。つまり頚椎症性脊髄症とは、頚椎の加齢性変化により脊柱管が狭くなり、その内部で脊髄が圧迫される病気です。脊髄は主に四肢の運動・感覚を支配する大切な神経ですから、この病気では後述するような様々な症状が出現します。

    頚椎後縦靱帯骨化症とは?

    頚椎は7個の椎骨の上下の連なりから構成されていますが、上下の骨は靱帯で連結し支えられています。後縦靭帯はその靱帯の1つで、椎体の後面を縦に走行することから「後縦靱帯」と呼ばれています。頚椎においてこの後縦靭帯が骨に変化してしまう病気が頚椎後縦靱帯骨化症で、原因は不明です。問題はもともとこの後縦靭帯が脊柱管という脊髄の通り道の中に存在することであり、骨化するとすぐ近くを走行する脊髄を圧迫し、次項目のような様々な神経の障害を来してしまうことです。

    この病気は兄弟での発症もあり遺伝的素因が関与すると考えられていますが、次世代に必ず遺伝する病気ではありません。

    症状

    上記どちらの病気も頚椎で脊髄が圧迫されることにより以下のような症状が出現します。

    • 四肢の知覚障害 (しびれ、痛み、知覚鈍麻、知覚過敏など)
    • 歩行障害 (ふらつき、不安定感など)
    • 手指の巧緻運動障害 (箸、ボタンの留め外し、
      書字などが不自由になる)
    • 四肢の運動麻痺
    • 排尿障害 (頻尿、尿意の切迫など)

    首の痛みを全く伴わずに上記のような四肢の神経症状が出現することも多く、頚椎疾患であることすら気付かれないこともあります。

    診断

    上記のような神経症状を詳細に問診・診察し、頚椎において脊髄への圧迫が疑われるようであれば画像検査を行います。単純X線検査では頚椎の変形の程度や骨化巣の有無を知ることが出来ますが、脊髄そのものはX線では写らないのでMRIにて脊髄への圧迫の有無を調べることになります。脊髄への圧迫の程度や動的圧迫要素をさらに詳細に評価するために脊髄造影検査を行うこともあります。

    また頚椎後縦靱帯骨化症においては骨化巣を詳細に描出するためにCT検査も行います。

    治療

    症状が四肢のしびれなどの感覚障害のみであれば、内服や装具などの保存療法を行ない定期的に外来で経過観察をします。しかし手指の巧緻運動障害や歩行障害が出現し進行するような重症例では手術を検討しなければなりません。脊髄は脳と同じく中枢神経であり、慢性圧迫、血流障害、外傷などによって一度障害を受けるとその原因を取り除いても機能回復は良くありません。ですので脊髄が圧迫によって永続的な障害を受けてしまう前に、その圧迫を取り除いてあげなければいけないのです。

    なんらかの薬剤によって脊柱管を広げたり、骨の変形や靱帯の肥厚を元に戻したり、骨化巣を溶かすことが出来ればいいのですが、残念ながらその様な内服薬や注射薬は現在のところありません。つまり「脊髄への圧迫を取り除く」という根本的な治療は手術しかありません。

    手術は前方固定術と後方除圧術に大別されます。各症例で詳細な検討によりいずれかの手術法が選択されますが、多くの場合に後方除圧術(椎弓形成術)が適応になります。当院での後方除圧術は、選択的椎弓形成術(スキップラミネクトミーなど)という方法で行っています。この方法は手術用顕微鏡を用いることにより良好な視野と操作性を確保し、後方の筋肉を温存しつつ症状の原因である部位を選択的に除圧する方法で、従来の手術より低侵襲性と安全性に優れています。そのため術後の痛みも少なく手術翌日より歩くことも可能です。

  • 糖尿病網膜症

    糖尿病の方に生じる代表的な合併症の一つとなります。眼内の毛細血管が悪くなってしまうことからむくみや出血が生じます。悪化すると眼内に増殖膜と呼ばれる膜が形成され、網膜剥離などを引き起こし、失明に至ることもある疾患です。

    早期発見早期治療が重要となるため、糖尿病の治療を受けられている方は症状が無くても定期的な眼科受診が必要となります。

  • 動脈硬化性閉塞性動脈疾患

    動脈硬化とは、動脈の壁にコレステロールがたまり、硬くなったり狭くなったりして血流が悪くなる状態です。全身の血管に起こりえますが、ここでは、頚部~頭蓋内血管の動脈硬化性病変について解説します。

    症状

    • 片側の手足に力が入りづらくなったり動かしにくくなったりする
    • 口がもつれて話しづらくなったり言葉が出にくくなったりする
    • 片側の目が見えにくくなる

    多くの場合、症状は「突然」起こります。症状が続く場合はもちろんですが、一時的なものですぐになおったとしても、すみやかに脳神経外科を受診してください。脳梗塞や一過性脳虚血発作:TIA(脳梗塞になりかける発作)の可能性があります。そして、その背景に、頚部あるいは頭蓋内動脈の狭窄や閉塞がかくれているかもしれません。

    原因

    加齢や高血圧・糖尿病・脂質異常などの生活習慣病、喫煙などにより動脈硬化が進行した場合、頚部や脳の血管に狭窄や閉塞が起こります。

    すると、狭窄/閉塞箇所の先に十分な血流が届かなくなったり、狭窄箇所での血流の乱れによって生じた血栓が血管を閉塞したりすることで、脳梗塞やTIAが起こるのです。

    治療

    TIAや軽い脳梗塞の症例では、将来より深刻な脳梗塞が起こることを回避するのが治療の目的となります。

    内科的治療

    • 抗血小板薬の内服
    • 生活習慣病のコントロール
    • 禁煙

    外科的治療

    • 頸動脈内膜剥離術:CEA(図1,2)

      頚部頸動脈狭窄に対して行います。頸動脈を切開し、血管壁の「油汚れ」を取り除きます。

    • 頸動脈ステント留置術:CAS

      血管内治療の項を参照してください。

    • EC-ICバイパス術(図3,4)

      頸動脈閉塞や中大脳動脈狭窄/閉塞に対して行います。本来は頭皮や筋肉を栄養している血管を頭蓋内に引き込み、脳表の血管と縫ってつなぐことで、不足した脳の血流を補います。

    その他

    脳ドックや、ほかの症状がきっかけでMRIの検査を受けた際に、たまたま動脈狭窄/閉塞がみつかることもあります。このような方も、ぜひ一度ご相談ください。

    (文責:原口 安佐美)

  • 顔面けいれん

    通常、片側のまぶた(上まぶた、または下まぶた)のピクつき(けいれん)から始まり、1か月程度で頬や口角にまで広がって頬が引きつれるようになり、まぶたのピクつきもひどくなってしばしば片目が開けられなくなってしまうというものです。

    眠っている時には起こりませんが、起きている時に、自分の意思とは無関係に、間欠的に起こります(出たり出なかったりします)。けいれんの反対側を下にして横向きに寝ると、けいれんが一時的に止まることもあります。

    直ちに命にかかわるような緊急性のある病気ではないのですが、対面での仕事を職業とする方や、他人から見られる機会の多い方などは、精神的ストレスが非常に大きくなります。また、車を運転するときなどには片目がよく見えないので危険です。

    症状のポイント(左側の場合)

    • 左頬の筋肉がひきつれるため、左口角が挙上します。
    • 鼻唇溝が、よりはっきりします。
    • 左眼が開かなくなります。
    • 左眉が下がり、右眉がやや上がります。
    • 右眼がやや開き気味になります。

    原因

    現代医学では、脳の中の顔面神経が脳幹から出始めたところで血管(主に動脈)に圧迫されることが主な原因であると考えられています。

    脳の中では、神経と血管が1ミリ未満の間隔で交叉しているところがたくさんあります。そこへ動脈硬化などで血管が蛇行したり、あるいは、脳が萎縮するなどして神経の位置がわずかに変わったりなどして、顔面神経と血管がぶつかり合うようになってしまうことがあります。

    その結果、押された顔面神経(核)が興奮して、顔面神経が支配している表情筋を、自分の意思とは無関係にピクピクと動かすようになってしまうのです。

    顔面神経(末梢)の走行(顔の皮下の部分)

    性差・頻度

    中年以降の女性に多く(男性の約2倍)、人口1万人あたり2人程度(0.02%)といわれています。

    検査・診断

    上記のような典型的な症状と経過から診断することも可能ですが、通常、頭部MRI(脳を写す検査)とMRA(血管を写す検査)を撮影して、脳の中に他の疾患がないことを確認し、顔面神経を圧迫している血管等を同定します。

    血管の種類によって後述する手術のやりやすさが変わってくるので、画像検査は重要な情報となります。

    治療法

    1)薬物療法(薬を飲む治療法)

    ベンゾジアゼピン系の鎮静・抗不安薬等を内服することで、けいれんが和らぐことがあります。薬を飲むだけなので患者さんの負担は軽いというメリットはありますが、けいれんを完全に止めることは難しいです。

    2)ボトックス治療

    ボツリヌス毒素を顔面の皮下に注射することで顔面筋を一時的に麻痺させ顔面けいれんを直接ストップさせます。注射なので穿刺時の痛みはありますが、その程度の負担で済むというメリットがあります。ただ、根治治療ではなく、注射の効果も数ヶ月程度しか持続しませんので、数ヶ月毎に注射を受け続ける必要があります。また、注射を繰り返すと顔面神経麻痺を起してしまうことがあります。

    3)微小血管減圧術(手術)

    全身麻酔下で行います。具体的には、耳たぶの後ろの骨が出っ張ったところ(乳様突起といいます)の根元を中心に、皮膚を長さ7-8cm程度切開し、直下の頭蓋骨に500円玉くらいの穴を開けます。骨の穴から顕微鏡を使って脳の中を覗き込むと、小脳越しの奥深くに顔面神経が見えてきますので、顔面神経が脳幹から出てくるところで血管が顔面神経を圧迫している所見を確認し、血管を移動させて圧迫を解除するように操作します。手術時間は、通常、3時間くらいです。

    皮膚切開部と開頭部位

    手術なので入院が必要となりますが、理論的には根治治療であるといえます。順調にいけば、けいれんが一生再発しないことを期待することができます。ただし、手術による合併症は一定の頻度で起こり得ます。

    以上のような治療法のメリット・デメリットをご理解いただいたうえで、患者さんご自身の状態、ライフスタイル、価値観などに照らしわせて、自分に最適の治療法を選んでいただくことになります。

    最後に

    顔面けいれんは、生命にかかわる病気ではありません。しかし、けいれんによる精神的苦痛は非常に大きいといわれます。もしけいれんが気になってお悩みでしたらどうぞお気軽に受診・ご相談ください。

    (文責:福永篤志)

  • 緑内障

    視界の中に見えづらい、見えないところが生じてくる疾患です。初期から中期にかけては自覚症状に乏しく、一旦進行した症状は改善することができないため、症状を自覚してからの受診では治療が困難となることもあります。40歳以上では20人に1人は患っていると言われています。

    自覚症状が無くても人間ドックでの眼底検査や眼科受診をして頂く事が大切な疾患です。

  • 特発性正常圧水頭症

    はじめに

    「水頭症」とは、一言でいえば、頭の中に水が溜まってしまう病気です。

    頭蓋骨の中は、脳が水(脳脊髄液といいます)に浮いている状態です。そこへ、水が増えて溜まってしまうと、脳は頭蓋骨の中に閉じ込められて行き場がなくなってしまい、脳が圧迫されることで具合が悪くなってしまいます。

    具体的には、歩行障害、排尿障害(尿失禁など)、認知障害といった症状(とくに、歩行障害)が見られるようになります。

    水頭症の三つの特徴

    • 歩行障害
    • 排尿障害
    • 認知障害

    このうち、歩行障害が多い。

    水頭症には、くも膜下出血等の後に合併症として起こる続発性と、明らかな原因がなく起こってしまう特発性の2つのタイプがあります。

    今回は、特発性正常圧水頭症についてわかりやすく解説していきます。

    症状の特徴と経過

    特徴は、高齢者に多く見られ、症状が徐々に悪化します。

    典型的な経過は以下の通りです。

    「これまで特段大きな病気をしたことがなかったのに、1~数年前ころから徐々に歩くスピードが遅くなって、若い人によく追い抜かされるようになり、最近は、小刻み歩行が目立ち、とくに方向転換時にふらつくようになって、先日は、転んで怪我をしてしまった。怖くて外出ができない。また、トイレでの排尿が間に合わず、失敗するようになり、さらには、物忘れも気になる」

    診断基準

    診断項目

    • 60歳以上
    • 歩行障害、認知障害、排尿障害のいずれか1つ以上の症状がある
    • 脳室が有意に拡大(Evans index* > 0.3)
    • 他の神経疾患では説明できない
    • 外傷や脳卒中などの脳疾患の既往がない
    • 脳脊髄圧<200 mmH2O(圧が正常範囲内である)
    • 頭部MRI画像で典型的な所見(DESH*等)を認める
    • タップテストで症状の改善を認める

    (参考基準)

    Evans index

    (新井一.脳21:41-45, 2011)

    Evans index =側脳室前角最大幅(A)/頭蓋内最大横径(B)
    >0.3の場合、有意な脳室拡大と判定する。

    DESH

    (難病情報センターHP「正常圧水頭症」より)

    上記8項目は、いずれも重要なポイントですが、最も重要なのは症状(とくに歩行障害)です。患者様自身が困っているかどうか、「昔はこうではなかった」とか、「歩くと転びそうで、怖くて外出できない」といった切実な訴えがあるかどうかを、治療の判断基準としています。画像所見も非常に重要ですが、画像だけで診断することはできません。画像は典型的でも症状のない方は、「AVIM」と呼ばれ、定期的な経過観察が必要とされています。

    また、脳萎縮、認知症、白質病変、脳梗塞、パーキンソン病といった他の疾患との鑑別も、非常に重要です。なぜなら、症状の原因として他の疾患による影響が大きいのであれば、手術をしても症状の回復に期待が持てないからです。そのため、鑑別診断は慎重に行います。

    脳萎縮などによる認知症の可能性のほうが高い場合には、認知症専門外来をご紹介します。

    治療方法

    治療方法は、主に、手術となります。残念ながら、薬の効果は期待できません。稀に、タップテスト(腰椎穿刺により脳脊髄液を約30ml採取して、症状が良くなるかどうかを調べるテスト)の後に症状が改善し、手術せずに済む方もいらっしゃいます。

    手術の名前は、シャント術といいます。以下に具体的なやり方を説明いたします。

    1. L-Pシャント術(腰椎腹腔短絡術)

    腰から針を刺して、針の内筒を通して細いチューブを15cm程度挿入し脳脊髄液を排出させ、チューブは皮下に埋め込んで、反対側のチューブ断端をお腹の中(ダグラス窩)に留置します。したがって、チューブ全体は、腰からお腹へと、通常、左側の脇腹の皮下を通して埋め込まれることになります。

    2. V-Pシャント術(脳室腹腔短絡術)

    脳室という、頭の中の水が溜まった部屋に、通常、右前頭部からチューブを刺しこんで、そのチューブを皮下に埋め込み、反対側のチューブ断端はお腹の中(肝上面、ダグラス窩など)に留置します。結局、チューブ全体は、右前頭部から右耳の後ろを通り、右鎖骨の上、右前胸部を経てお腹へと、皮下を通して埋め込まれることになります。

    3. V-Aシャント術(脳室心房短絡術)

    脳室に、通常、右前頭部からチューブを刺しこんで、そのチューブを皮下に埋め込み、反対側のチューブの断端は、右頸静脈の中に挿入して、右心房内に留置します。したがって、チューブ全体は、右前頭部から右耳の後ろを通り、右頚部から血管の中に入り右心房内へと、皮下を通して埋め込まれることになります。

    (日本脳神経外科学会HPより)

    以上の3つの方法がありますが、通常はV-PシャントかL-Pシャントのどちらか1つが選択されます。

    治療成績

    症状の改善率は以下の通りです。

    症状の改善率

    歩行障害 60~77 %
    排尿障害 52 %
    認知障害 56~69 %

    (特発性正常圧水頭症診療ガイドライン第3版による)

    特徴は、歩行障害が最も改善しやすい ということです。

    合併症(有害事象)

    シャント術は、細いチューブを体内に埋め込み、頭蓋・脊髄内の脳脊髄液を腹腔内などへ流し込むようにする手術なので、以下のような合併症(有害事象)があります。

    合併症(有害事象)

    • 出血(脳出血、硬膜下血腫など)
    • シャントチューブ感染・閉塞・自然抜去
    • 髄膜炎
    • 頭痛
    • 腸管などへのシャントチューブの迷入

    上記ガイドラインによれば、これらの合併症の頻度は18.3%と報告されています。

    診察・治療の流れの一例

    • 1.外来受診(初診あるいは紹介)

      問診、診察、MRI検査の予約をします。とくに、歩行障害の状況と日常生活上のお困り具合を確認します。

    • 2.MRI検査

    • 3.外来で結果説明

      DESH等の有無を確認します。症状と画像所見を総合的に検討し、以下のタップテストに進むか、外来でそのまま経過観察するかを判断します。

    • 4.タップテスト目的入院
      (1回目入院)
      *入院しない場合もあります。

      通常、月曜日入院、水曜日腰椎穿刺(髄液採取)、土曜日退院の6日間の入院です。入院中に歩行テストと認知機能検査を2回ずつ行い、腰椎穿刺の効果を判定します。

    • 5.自宅退院後、しばらく様子観察

      歩行状態がその後改善するのか、あるいは、徐々に悪化するのかなどを、ご家族等に観察して頂きます。

    • 6.退院後初回外来(約2週間後)

      退院後の様子から、シャント術をしたほうがよいかを判断します。シャント術をお勧めしない場合には、そのまま経過観察となります。

    • 7.シャント術目的入院(2回目入院)

      通常、火曜日入院、木曜日手術、翌週木曜日検査・抜糸、その週末に退院の、約12日間の入院です。患者様の状態に応じて、入院を延長して歩行リハビリをしばらく継続することもあります。

    • 8.自宅退院して、外来にて経過観察
      (約半年間)

      合併症が出現しないかどうかを慎重に観察します。状態が安定すれば、外来に通院する必要はなくなります。

    (文責:福永篤志)

  • 腰椎椎間板ヘルニア

    腰椎椎間板ヘルニアとは?

    脊椎は椎骨とクッションの役割をする椎間板(軟骨)が交互に重なり合った繰り返しの構造になっています。この椎間板は体の重みを支えているために常に力学的ストレスを受けています。通常20-25才ぐらいからこの椎間板は加齢による変化(=水分の喪失と弾力性の低下) が始まります。その加齢性変化が進行することにより椎間板外側部の線維が断裂し、その断裂部から椎間板の中心部にある髄核といわれる成分が逸脱(ヘルニア)した病態を腰椎椎間板ヘルニアと呼びます。椎間板のすぐ近くは重要な神経が走行しており、椎間板から逸脱したヘルニアの塊が神経を圧迫すると以下のような様々な神経障害を来します。

    症状

    このヘルニア塊によって腰椎から下肢に走行する神経が刺激されると、下肢の外側や後面に坐骨神経痛、しびれ、知覚低下などの感覚の障害が生じます。他院にて「坐骨神経痛」と診断されたが「椎間板ヘルニア」ではないですか?、という質問をよく受けますが、「椎間板ヘルニア」が病名で、それによる症状名が「坐骨神経痛」であり、別の病態を表しているものではありません。

    神経への圧迫の程度がひどいと運動神経線維も障害されて、下垂足などの運動麻痺が生じる場合があります。さらに巨大なヘルニア塊が脊柱管の大部分を塞いでしまうと排尿の障害が生じる場合があります。

    診断

    上記のような下肢の症状があり、神経学的な診察により腰椎椎間板ヘルニアが疑われたら、画像検査を行います。単純X線検査では脊椎の不安定性などを知ることが出来ますが、椎間板や神経を直接描出することは出来ません。そこでMRI検査をおこない、ヘルニア塊による神経への圧迫を評価します。また必要に応じてCT検査、脊髄造影検査、神経根造影・ブロック検査なども施行されます。

    治療

    重篤な運動麻痺や排尿障害がなければ、絶対に手術をしなければいけないということはありません。安静、コルセット、投薬、神経ブロック療法などの保存療法(手術以外の治療)によって坐骨神経痛が徐々に楽になることは十分に期待できます。しかしそれらの保存療法を十分に行ってもなかなか坐骨神経痛が楽にならず、患者さん自身が希望される場合は手術を行います。一方、重篤な運動麻痺や排尿障害を生じている場合、圧迫されている神経が完全にその機能を失ってしまう前に救ってあげるべきであり、なるべく早期の手術を勧めさせて頂きます。

    腰椎椎間板ヘルニアの手術は後方より進入し、ヘルニア塊を取り除くことにより神経への圧迫を解除します。近年、内視鏡を用いた小皮切のヘルニア摘出術が多くの施設で行われていますが、そのモニター画像は2次元であり奥行き情報は得られません。当院の手術では、手術用顕微鏡または手術用拡大鏡を用いて、内視鏡では得られない立体視のもとに極めて安全にヘルニア塊を摘出しています。当院の脊椎手術で顕微鏡または拡大鏡を用いているのは手術侵襲の軽減のためではなく安全性の向上のためです。

  • 腰部脊柱管狭窄症

    腰部脊柱管狭窄症とは?

    腰椎はドーナッツ型の椎骨が縦に重なるように連なることによって「脊柱管」というトンネルを形づくっており、その中に左右それぞれの下肢へ向かう神経が走行しています。腰椎の加齢性変化に伴って変形した骨や肥厚した靱帯が脊柱管内にせり出すと、脊柱管が窄(すぼ)まって狭くなってしまいます。また、やはり加齢性変化を基盤として椎骨間の連結が前後にずれると、それら椎骨が形づくるトンネルの走行もずれ、同様に脊柱管は狭くなってしまいます。このように腰椎で「脊柱管」という神経の通り道が狭くなる病態を腰部脊柱管狭窄症と呼びます。腰部脊柱管狭窄症では脊柱管の内部を走行する神経が圧迫され、以下のような様々な神経障害を来します。

    症状

    腰から下肢に向かう神経が障害を受けるので、下肢の知覚障害、運動障害、歩行障害などの症状が出現します。知覚障害としては腰椎椎間板ヘルニアと同じように下肢の外側や後面、足底などに坐骨神経痛、しびれ、違和感、知覚低下などの症状が出現します。

    また本病態の特徴的な症状とされる「歩行障害」は「間欠性跛行」といわれ、

    • 歩くことによって下肢の痛みが出現し増強する。
    • 歩いていると両足先からしびれが上がってくる。
    • 歩いていると脚が上がらなくなってくる、脚を運べなくなってくる。

    といった症状を呈します。前屈みで数分間休息することにより症状が改善することも特徴的です。

    さらに、脊柱管内で圧迫される神経は膀胱をコントロールする神経を含んでいるため、排尿障害(尿の回数が多い、残尿感がある、尿の勢いが弱いなど)が出現することもあります。

    診断

    上記のような下肢痛や歩行障害などの症状があり、神経学的な診察により腰部脊柱管狭窄症が疑われたら、画像検査を行います。単純X線検査では脊椎の不安定性や変形の程度などを知ることが出来ますが、脊柱管内の神経やそれを圧迫している靱帯などを直接描出することは出来ません。そこでMRI検査をおこない、脊柱管の狭窄があるかどうかを調べます。また、狭窄の程度や動的因子(腰部の動きに伴う狭窄の変化)をさらに詳細に評価するために、脊髄造影検査と造影後CT検査を行うこともあります。脊髄造影後CT検査では、MRIよりさらに精細な画像を描き出すことが出来ます。

    治療

    自覚症状が軽度であれば、プロスタグランジンE1誘導体製剤や鎮痛剤の内服、コルセット装用などの保存療法を行います。しかし歩行障害や排尿障害などの症状が重度であったり、十分な期間の保存療法を行なっても症状の改善に乏しい場合は手術を検討します。

    腰部脊柱管狭窄症に対する手術の基本は背中側(後方)から神経への圧迫を除く(除圧)ことです。神経を圧迫している肥厚した黄色靭帯や骨を切除する、つまり神経の周りを掃除することによってその通り道(脊柱管)を拡げてあげれば神経はそれまでの圧迫から免れることが出来ます。腰部脊柱管狭窄症に対する除圧術として、近年様々な進入法が考案されていますが、当院では「腰椎棘突起縦割式椎弓切除術」という方法で行っています。この方法は骨に付着する筋肉や靱帯をなるべく剥がさないため、筋肉の損傷が最小限に抑えられる低侵襲な進入法です。

    一方、腰部脊柱管狭窄症が脊椎の不安定性や「ずれ」を基盤に生じている場合には、除圧術のみでは十分な症状の改善が期待できないことがあります。その場合、固定術(PLIF : 後方経路腰椎椎体間固定術)を併用します。ずれたりぐらついている椎骨を金属のスクリューで固定し、自家骨を移植することにより不安定な椎骨間の骨癒合を得て、脊椎を安定化させることで症状の改善を図ります。

  • 片頭痛

    はじめに

    片頭痛は、単なる頭痛ではありません。日常生活に支障をきたすことが大きな特徴です。

    具体的には、目の前にギザギザしたような模様(閃輝暗点(せんきあんてん)といいます)が見えた約30分後から頭痛が始まり繰り返し吐いて寝込み、光と音が苦手で布団を被り市販の痛み止めを飲んで寝たら翌朝には治ってしまうような経過が典型的です。

    (前兆の閃輝暗点が出ない方もいらっしゃいます)

    もちろん、頭痛さえなければ普通に生活できるのですが、月に何回も頭痛が起きてしまうと、仕事や家事がままなりません。このような頭痛発作による経済的損失は、年間3,600億円~2兆3,000億円とも試算されています1)

    片頭痛で悩んでいる方々は日本に約900万人もいると推測されていますが2)、市販薬で我慢したり、忙しかったりして病院を受診できない方々が結構多いようです。

    頭痛の原因

    原因については、今のところ解っていません。双子研究や母とその娘に比較的多いことなどから、遺伝的要因が疑われていますが、確実な遺伝子などの特定には至っていません。

    ただ、片頭痛を起こしやすい因子としては以下のものが指摘されています3)

    • ストレス
    • ストレスからの解放
    • 疲れ
    • 睡眠の過不足
    • 月経周期
    • 天候の変化
    • 温度差
    • におい
    • 運動
    • 欠食
    • 性的活動
    • 旅行
    • 空腹
    • 脱水
    • アルコール
    • 特定の食品

    もちろん、これらがすべて頭痛を誘発するとは限らず、個人差が大きいです。もし、自分に当てはまる誘因があれば、それらを意識して避けてみるのもよいかもしれません。

    当院での治療方針

    多くの方々が、まずは市販薬で頭痛を凌いでいるのではないでしょうか。

    しかしながら、病院には市販薬以外の治療法があります。

    まずは、トリプタン製剤といわれる
    頓服薬です。

    日本では2001年から販売され、とくに片頭痛の前兆を感じる方々には、前兆を感じたときに飲めば、いつもの頭痛発作がかなり抑えられるようになります(いつもの強さを10とすると2以下に抑えられると言われています)。販売当時は「片頭痛の特効薬が出た!」と、かなり評判になりました。今でも、多くの頭痛患者さんの救世主となっています。

    ただ、頭痛がピークに達してしまうと飲んでも効果が期待できないこと、前兆を感じない人には飲むタイミングを計るのが難しいことなどがさらなる改善点として挙げられます。

    つぎに、抗CGRP抗体関連薬といわれる
    予防注射薬です。

    日本では2021年から販売されている新薬です。月に1回皮下に注射すれば、毎日のように重苦しかった頭痛が目の前がパーッと明るくなるように軽くなっていく可能性があります。頭痛薬を月に7-8回も飲んでいた人がこの注射を月に1回打つことで頭痛薬を飲む回数が3-4回以下に減ることが期待できます。しかも、毎日の鈍痛が軽くなり、日常生活を楽に過ごせるようになるかもしれません。

    まだ後発品がないため月1万円(初回のみ2万円)程度の費用がかかってしまいますが、頭痛の苦しさに比べれば問題ないという患者さんもいらっしゃいます。

    そのほか、抗CGRP抗体関連薬は経済的にちょっと難しいという方々には、バルプロ酸ナトリウム等の比較的安価な内服薬による頭痛予防療法があります。

    バルプロ酸ナトリウムは抗てんかん薬として古くから処方されている薬ですが、通常量よりも少なめに飲むことで脳の神経細胞の興奮を抑え頭痛発作の予防効果があります。頓服薬ではなく毎日飲む必要がありますが、半年から1年程度飲み続けると脳の神経細胞の興奮が治まりバルプロ酸ナトリウムを中止しても興奮が治まった状態が続いて頭痛薬を飲む回数を減らすことが期待できます。副作用としては、気分の落ち込みが強くなったり、妊娠すると胎児に奇形が生じてしまう可能性が比較的高かったりすることなどがあり、若い女性にはあまりお勧めできません。

    当院での頭痛診療の流れ

    • 「初めての方」窓口

      8:15~11:30までの間にご来院ください。予約は不要です。

    • 外来受付(13ブロック)

    • 問診票等の記入

      これまでの頭痛の経過、頭痛の性状、服薬歴、受診歴、既往歴やHIT-6という頭痛による日常生活への支障度の評価シート等をご記入いただきます。

    • 外来診察(6番)

      問診票等の記載を確認し、家族歴、嗜好品などから片頭痛の可能性を医学的に判断。頭部CT(当日撮影可能)または頭部MRIの予約、血液検査等を実施。ご希望により鎮痛薬を処方。
      頭痛ダイアリーをご自宅で記載していただきます。

    • 帰宅

      頭痛ダイアリーを記入

    • 2回目の外来診察

      頭痛ダイアリーをご持参ください。
      頭部MRIと血液検査の結果説明、治療方針を決定。

    当院は、日本頭痛学会認定の准教育施設です。また、脳神経外科専門医による診察なので、片頭痛以外の様々な脳疾患にも対応可能です。

    たかが頭痛、されど頭痛

    これまで「いつもの頭痛か…」と諦めていた頭痛が最新の治療法で劇的に良くなる可能性があります。たかが頭痛、されど頭痛です。頭痛を減らして良質な日常生活を取り戻してみませんか。われわれ脳神経外科医が患者様の親身になって治療のお手伝いをいたします。

    文責:日本頭痛学会認定専門医・指導医
     福永篤志
    毎週火曜日午前 初診外来担当

    参考文献

    1) 日本神経学会・日本頭痛学会・日本神経治療学会監修.頭痛の診療ガイドライン2021. p113,医学書院,東京,2021

    2) 「頭痛の診療ガイドライン2021」(日本神経学会・日本頭痛学会・日本神経治療学会監修,医学書院,東京,2021)p91の記載「15歳以上の年間有病率8.4%」から算出

    3) 日本神経学会・日本頭痛学会・日本神経治療学会監修.頭痛の診療ガイドライン2021.p104,医学書院,東京,2021

  • 成人もやもや病

    日本人に多い、原因不明の難病です。内頚動脈の終末部が徐々に細くなり、代償性に「もやもや」とした異常血管が生じます。そのために、脳の血流が不足して一過性脳虚血発作;TIAや脳梗塞を生じたり、脆弱なもやもや血管に負荷がかかって頭蓋内出血を起こしたりします。

    症状

    虚血型(TIA型/梗塞型)

    片側の手足に力が入りづらくなったり動かしにくくなったり、口がもつれて話しづらくなったり言葉が出にくくなったり、といったことが起こります。熱い食べ物をふーふーと冷ました時、楽器をふいた時、運動をした時など、脳の二酸化酸素濃度が低下することで虚血症状が誘発されます。

    出血型

    虚血型同様、片まひや言語障害が突然起こります。加えて、頭痛や嘔吐、重篤であれば意識障害を伴います。

    頭痛型

    てんかん型

    無症状型

    その他

    脳が慢性的な虚血状態にさらされることにより、高次脳機能障害を呈する場合もあります。

    原因

    まだ解明されていません。ある特定の遺伝子を持つ方が発症しやすいといわれています。

    治療

    内科的治療

    • 抗血小板薬の内服
    • 降圧剤の内服
    • 鎮痛薬の内服
    • 抗てんかん薬の内服

    外科的治療

    • 血行再建術(図5,6)

      →開頭し、頭蓋外の血管と脳表の血管を縫ってつないだり(直接法)、筋肉や硬膜を脳表に接着させたりして(間接法)、血流の改善を目指します。
      血流を補うことで脳梗塞の発症のリスクを軽減し、また、もやもや血管への負荷を軽減することで頭蓋内出血のリスクも減少します。

    その他

    家族発症が10-20%にみられます。ご心配な方はご相談ください。

    (文責:原口 安佐美)

  • 脳血管内治療

    近年世界的に普及してきた治療法で、主に大腿部から挿入されたカテーテルと呼ばれる細い管を用いて治療を行います。脳や頸部の血管に留置されたカテーテルから様々な治療機器を挿入したり、薬剤注入を行うことで、脳や頸部の血管に対する治療が可能です。

    当院では現在まで100例を超える脳血管内治療が施行されております。

    当院での脳血管内治療の対象

    • 急性期脳梗塞(急性脳血管閉塞症)
    • 脳動脈瘤(破裂、未破裂)
    • 頚部頚動脈狭窄
    • 硬膜動静脈瘻・脳動静脈奇形
    • 良性脳腫瘍
    • その他

    1 急性期脳梗塞

    発症から4.5時間以内の脳梗塞については血栓溶解薬であるrt-PAの静脈注射療法が広く行われています。しかし脳の太い血管(内頸動脈、中大脳動脈近位部、椎骨脳底動脈等)が閉塞した場合、rt-PAの含めた薬物療法だけでは十分な治療効果が得られない場合が多くありました(再開通率は3割ほどとされます)1)

    血栓回収療法は発症から8時間以内(症例によっては24時間以内)の脳の太い血管の閉塞に対して行う治療法です。ステントリトリーバーや吸引カテーテルといった機材を用い閉塞した血管を再開通させることが可能です。近年の治療機器や手技の改良で再開通率は7割を超えております2)。十分な再開通が得られた場合、脳梗塞による症状がなくなったり後遺症が軽く済んだりする可能性が高くなることが当院でも経験されています。

    2 脳動脈瘤に対する血管内治療

    日本脳神経血管内治療学会からの報告よると、国内の脳血管内治療が占める比率は、2001年の11.8%から直線的に増加しており、2019年の48.7%から2020年は初めて半数を超えて51.7%になっております。早期に普及した海外の脳動脈瘤治療に占める血管内治療の比率は、米国では7割、フランスでは9割に達しています3)

    1)未破裂脳動脈瘤の血管内治療

    脳動脈瘤に対しては以前から開頭クリッピング術が行われています。一方で脳動脈瘤に対する血管内治療は近年発展してきた比較的新しい治療法です。動脈瘤の中にカテーテルを留置しプラチナ製のコイルを動脈瘤内に充填し動脈瘤を閉塞させます(コイル塞栓術)。動脈瘤の状態によっては風船付きのカテーテル(バルーンカテーテル)や金属の筒(ステント)を併用し動脈瘤を塞栓することもあります。

    開頭クリッピング術と比較して、切らずに済む手術ですので患者さんへの負担が少なくて済む利点があります。一方で、血栓を予防するため血液が凝固しにくくなる薬剤を一定期間服用してもらう必要があったり、開頭クリッピング術と比較して再治療が必要になる割合が高いといった欠点もあります。当院では、動脈瘤の位置、サイズ、患者さんの全身状態などを検討し、治療を行っています。

    2)破裂脳動脈瘤(くも膜下出血)

    脳は外側から硬膜、くも膜、軟膜で覆われており、脳動脈はくも膜と軟膜の間に存在します。このため動脈瘤が破れるとくも膜と軟膜の間に出血が起こり、この状態をくも膜下出血と呼びます。
    一般的に、死亡率が高いうえ救命できても重い後遺症を残すことがある重篤な病気です。

    破裂脳動脈瘤の症状

    • 「頭をバットで殴られたような」突然の激しい頭痛
    • 意識がもうろうとする、意識を失う
    • 嘔吐する
    • 手足が麻痺したり、物が二重に見えたりする

    破裂脳動脈瘤に対する血管内治療について

    破裂した脳動脈瘤の治療はまず動脈瘤からの出血を止めることです。破裂脳動脈瘤に対するコイル塞栓術の方法そのものは、未破裂脳動脈瘤に対するコイル塞栓術と基本的に同じです。

    当院では患者様の状況に応じてコイル塞栓術と開頭クリッピング術いずれかを選択して行っております。またくも膜下出血後に3割程度発症するとされる脳血管攣縮に対し薬剤の動脈注入も行っております。

    3 頸部頸動脈狭窄症とは?

    首にある頸動脈という太い血管が狭くなる病気です。

    頸動脈は顔面や頭部の皮膚や筋肉に血流を送っている外頸動脈と、脳や眼球に血流を送っている内頸動脈に分かれますが、頸部頸動脈狭窄症はこの内頸動脈の根元が狭くなり血液の流れが悪くなり脳梗塞の原因となる病気です。

    生活習慣病が基礎にあることが多く、日本人の食生活の内容が欧米化するにしたがい徐々に増加傾向を示しています。

    1)頸部頸動脈狭窄症の症状

    狭窄が強くなってくると脳梗塞を発症する原因となり、言語障害、手足の麻痺、視力障害などが起こることがあります。

    2)頸部頸動脈狭窄症に対する血管内治療(頸動脈ステント留置術)について

    頸部頸動脈狭窄症に対する治療は、全身麻酔のもと頸部の皮膚を切開し、狭くなっている頸動脈も切開した上で狭窄の原因となっている病変を切除するという頸動脈血栓内膜剥離術が以前からなされてきました。一方で、最近はカテーテルを用いた頸動脈ステント留置術が普及してきております。

    これはカテーテルを使って狭くなっている頸動脈を血管の内部から広げるという治療法です。風船付きのカテーテルを用いて狭くなっている部分を広げたのち、広がったところにステントと呼ばれる編み目構造になった金属の筒を留置します。

    局所麻酔で施行でき、傷が少ない(太ももの付け根に3ミリメートル程度です)のが利点です。また、最近はステント留置時に併発することがある散在性脳梗塞を予防するため、2重構造のステントも開発され、当院でも良好な結果を得ています。

    当院では、これらの治療法の利点と欠点を十分考慮し、患者様に最適な治療方法を選択しています。

    4 硬膜動静脈瘻、脳動静脈奇形とは?

    硬膜動静脈瘻、脳動静脈奇形は、脳の動脈と静脈の形の異常により起こる稀な病気です。通常とは異なる血液の流れができてしまうことで、脳出血の原因となったりけいれん発作や耳鳴り、認知症の原因となることもある病気です。

    脳動静脈奇形は先天的な異常であることが知られていますが、硬膜動静脈瘻の原因は不明な部分が多く、いずれも出血を起こす危険性は年間1.5から8パーセントといわれています4), 5)

    1)硬膜動静脈瘻、脳動静脈奇形の症状

    出血を起こすと激しい頭痛や嘔吐、手足の麻痺や感覚の異常、言語障害や意識障害などが起こります。出血しない場合でも、けいれん発作や耳鳴り、目の充血、認知障害などの原因となる場合があります。何も症状がなく、頭部MRIなどの検査でたまたま発見されることもあります。

    2)硬膜動静脈瘻、脳動静脈奇形に対する血管内治療について

    いずれの病気も血管の異常が頭の中のどの場所にできたかによって治療法が大きく異なります。頭の皮膚や骨を切って行う開頭手術が適していたり、切らずに行う放射線治療が適していたりする場合があります。

    血管内治療もそれらの治療法のうちの一つであり、血管異常の場所、大きさ、形などにより治療方法を選択しています。

    カテーテルという細い管を用いた血管内治療は一般的に患者様への負担が少ない治療法ですが、血管内治療が危険な場合もあり十分な検査を行った上で手術適応を判断しています。

    5 良性脳腫瘍

    主に髄膜腫に対する開頭摘出術前の処置として行います。髄膜腫は血流の豊富な腫瘍であり、開頭摘出術に際し術中の出血が大きな問題になります。大きな髄膜腫の摘出手術では大量出血のため輸血が必要になることもあります。

    そこで、開頭手術の際の出血を最小限に抑える目的で、開頭摘出術前に腫瘍に血液を送っている血管をカテーテルを用いて閉塞させることがあります。これにより摘出時の出血を抑えることが可能となります。

    6 その他

    当院では頸動脈血管解離、外傷性仮性動脈瘤や難治性慢性硬膜下血腫などに対しても血管内治療で治療し、軽快されております。

    文献

    1)津本智幸 その他 tPA 静注療法・血栓回収療法の現状と課題Jpn J Neurosurg (tokyo)27:505-513 2018

    2) 木村 和美 大きく変貌する脳卒中診療 内科学会雑誌 109 巻 9 号 1938-1944 2020

    3)坂井信幸 スピリッツとサイエンス 理事長公演 第37回日本脳神経血管内治療学会学術集会 10/26 2021(福岡)日経メディカル2021/12/2

    4)横井 俊浩 その他 脳動静脈奇形の急性期外科治療 脳卒中の外科 41: 21 ~ 26,2013

    5)里見純一郎 その他 硬膜動静脈瘻の病態把握(判断)と治療(行動)Jpn J Neurosurg (tokyo)25:42-45, 2016

    (文責:布施 孝久)

  • 帯状疱疹後神経痛

    水痘・帯状疱疹ウイルスによる神経障害を原因とする神経障害性疼痛。痛みは持続痛、発作性の電撃痛が中心で、アロディニア(軽い接触など通常では痛みを起こさないような刺激で痛みを感じる状態)をしばしば合併します。痛みの性状や程度は様々です。かゆみを伴うこともあります。

    治療は特異的なものはなく、症状の緩和が主体です。薬物療法に、当科では神経ブロック等(硬膜外ブロック イオントフォレーシス 光線療法)を併用して治療を行っています。

  • 脊椎疾患

    整形外科領域疾患。症状は痛みやしびれで、脊髄神経の圧迫や虚血により生じます。

    現在当科の治療は、神経ブロック(硬膜外ブロック)が主体のため、整形外科でブロック治療が有効と判断された場合に行っています。神経ブロックは局所麻酔薬を使用し、痛みの悪循環(痛みがあると周囲に腫れが生じ、さらに圧迫をして痛みが強くなる)を断ち切ることで、症状の緩和を得る方法です。

    他にトリガーポイント注射や光線療法等も行っています。

  • 三叉神経痛

    顔面の三叉神経支配領域に現れる発作性の激しい痛みで、刃物で突き刺されたような短時間の痛みが反復します。持続痛の場合もあります。原因は、脳内にある三叉神経が、蛇行した微小血管によって圧迫されることで生じるとされていますが、特発性(原因不明)のことが多いです。

    まれに脳腫瘍等による圧迫もありますので、CTやMRIの検査が必要です。

    治療は、薬物療法が主体で、カルバマゼピンが第一選択薬として推奨されています。当科では薬物療法にくわえ、三叉神経末梢枝ブロックを併用していることが多いです。