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脳梗塞

脳梗塞

はじめに

脳梗塞について、主に患者様や一般の方々向けに、わかりやすく解説させていただきます。

脳梗塞の予防、あるいは再発予防に役立てていただければ幸いです。なお、超急性期の脳梗塞で血管内治療を要する場合については、「脳血管内治療」の解説をご参照ください。

脳梗塞とは?

脳梗塞とは、脳内や頸部の血管がつまってしまい、脳への血流が遮断されることによって脳細胞が死滅し、その脳細胞が司っていた機能が低下あるいは消失してしまう病気です。

脳梗塞には、主に動脈硬化のために血管の内腔が細くなっていたところへ血栓ができて血管がつまってしまうという「脳血栓」と、主に心房細動という不整脈のために心房内に比較的大きな血栓(塞栓といいます)ができてそれが脳内あるいは頸部の動脈に飛んでしまい詰まってしまうという「脳塞栓」の2つのタイプがあります。(その他特殊なタイプや分類不能なタイプもあります。)

脳梗塞のタイプ

1. 脳血栓

主に動脈硬化のために血管の内腔が細くなっていたところへ血栓ができて血管がつまってしまうタイプ。

2. 脳塞栓

主に心房細動という不整脈のために心房内に比較的大きな血栓(塞栓といいます)ができてそれが脳内あるいは頸部の動脈に飛んでしまい詰まってしまうタイプ

血栓のメカニズム

基本的には血栓(塞栓も含む)ができなければ脳梗塞にはなりません。つまり、血栓予防が脳梗塞予防となります。

では、なぜ血栓ができてしまうのでしょう?

人間の血液は、命を守るために凝固する働きがあります。怪我をして出血したら、かすり傷程度であれば自然に固まって血は止まります。これは、血液が血管外に出て空気に触れたこと等によって直ちに凝固システムが働くからです。血液は血管の中を流れていても、しばしば固まってしまい小さな血栓ができますが、血管を詰めてしまわないように、固まった血栓が再び溶け出す現象(線溶現象といいます)が起こります。このように血液は凝固と線溶をバランスよくコントロールされながら流れているのですが、このバランスが凝固優位に傾いてしまうと血栓ができやすくなってしまいます。

血栓形成のメカニズムは、ウィルヒョウの3つの特徴(Virchow’s triad)という考えが古くからよく知られています。血流の停滞、凝固機能の亢進、血管内皮の傷害の3つが血栓の形成に影響を及ぼすと考えられています。

ウィルヒョウの3つの特徴

  • 血流の停滞

    長時間同じ姿勢を続けるような状態。例:寝たきり、術後の安静、車中泊など

  • 凝固機能の亢進

    血液疾患、脱水、がん、妊娠、高齢など

  • 血管内皮の傷害

    けが、手術、カテーテル検査・治療、動脈硬化(プラーク形成)など

この考え方は、もともと深部静脈血栓症や肺塞栓症(いわゆるエコノミークラス症候群)のような静脈血栓症(静脈が血栓で詰まってしまう病気)を念頭において考えられていたものですが、脳梗塞のような動脈が詰まってしまう病気にも当てはめて考えることができます。

脳梗塞の経過と症状

1. 脳血栓の典型的な経過

突然、片麻痺、呂律障害、歩行障害、手足のしびれ、失語などの症状が出現しますが、症状が比較的軽く歩けたりするのでそのまま経過をみてしまうことがあります。

しかしながら、一晩寝ると、翌朝にはさらに症状が悪化・進行するので、やむを得ず救急要請となります。脳血栓の症状は、脳梗塞の場所によって変わりますが、後述する脳塞栓よりも比較的軽いのが特徴です。

ただし、もし救急要請せずにさらに自宅で様子を見てしまうと、日ごとに症状が悪化し、最悪の場合、生命の危険があるので、異変を感じた時点でなるべく早く病院を受診するようにしてください。

2. 脳塞栓の典型的な経過

脳血栓と同様に、突然、片麻痺、呂律障害、歩行障害、手足のしびれ、失語などの症状が出現しますが、症状は比較的重く、手足が全く動かなくなったり、言葉も全くしゃべれなくなったり、さらには意識状態も悪くなったりすることがあります。

理由は、塞栓が比較的太い動脈を詰めてしまうからです。

検査・診断

患者様の症状と経過から脳梗塞が疑われた場合には、頭部MRI(またはCT)検査を行います。MRIは、発症から間もない急性期の脳梗塞を写し出すことが可能です。

また、同時にMRAという血管のみを写し出す画像も撮影できるので、比較的太い血管であればどの血管が詰まったのか、あるいは狭窄して詰まりそうなのかを見つけることができます。

これらの画像検査の結果や、心電図の所見(不整脈の有無)、血液検査の結果などを総合的に評価して、脳梗塞とそのタイプを診断することができます。

治療法

発症から4時間半以内であれば、rt-PA(recombinant tissue plasminogen activator)療法という、血栓を溶かす比較的強い薬を点滴する治療法を行うことができます。ただし、全例に行えるというわけではなく、脳出血などの副作用が懸念されるため、薬を使用できるかの判断は脳卒中学会が作成したガイドラインに従って慎重に行います。

比較的太い血管が詰まってしまった場合には、血管内治療により詰まった血栓をカテーテルで吸い出すという血栓回収術をさらに行うこともあります。詳細については「脳血管内治療」の解説をご覧ください。

そのほかの治療法として、抗血小板薬や抗凝固薬(いわゆる血液サラサラ薬)を1~2週間程度点滴することによって、脳梗塞の進行を食い止めます。患者様の状態に応じて、脳保護薬や乳酸リンゲル液も追加で点滴することがあります。また、抗血小板薬や抗凝固薬を並行して内服していただくこともあります。

上記のような点滴・薬物療法のほか、リハビリテーションも早期に開始いたします。起立・歩行運動、手の巧緻運動、言語・嚥下運動、高次脳機能などについて患者様の症状に合わせて行います。

点滴が終了したら、脳血栓の患者様は抗血小板薬を、脳塞栓の患者様は抗凝固薬を内服していただきます。脳梗塞再発予防が目的ですから、抗血小板薬または抗凝固薬は、原則として一生飲み続ける必要があります。

脳梗塞再発予防のための内服薬

  • 脳血栓の場合→抗血小板薬
  • 脳塞栓の場合→抗凝固薬

脳梗塞のタイプによって内服薬が違うことがポイントです。脳血栓と脳塞栓は発症メカニズムが違いますので、飲む薬も違うのが原則です。

入院期間の目安と退院後の方針

入院期間の目安は約1ヶ月です。症状が軽く、入院中も症状の悪化や進行がなければ、1~2週間で自宅に退院できることもあります。麻痺などのため自宅への退院が難しい場合には回復期リハビリテーション病院や療養型病院などへの転院をご紹介いたします。

予防法

脳梗塞の予防で最も重要なのは、動脈硬化の進行予防です。高血圧や脂質異常症、糖尿病、肥満などの生活習慣病の管理と、喫煙、過度の飲酒をやめることが大事です。

また、心房細動を指摘された方は、抗凝固薬を予防的に内服することで脳梗塞(とくに脳塞栓)の発症を防ぐことが可能となります。まずは、かかりつけの先生にご相談ください。

あと、過去に脳梗塞を患ってすでにサラサラ薬を飲んでいる方は、毎日きちんと服用されてください。

つぎに忘れてはならないのが、脱水予防です。

脳塞栓について脱水は発症に関与する重要な因子であると報告されています1)

また、脳血栓でも脱水の有無が脳梗塞の長期予後に強く影響を及ぼす因子であると報告されています2)

私たちの調査では、午前6~7時には脳血栓が、午後2~7時と午後11~午前5時には脳塞栓が起こりやすいことがわかりましたので3)、就寝前後や起床時における脱水予防対策が重要ではないかと考えられます。

また、帯状高気圧型の気圧配置パターンの場合、脳塞栓が発症しやすく、その他高気圧型(帯状高気圧型と移動性高気圧型に分類できない高気圧型)の気圧配置パターンの場合には脳血栓が発症しやすいということも報告しましたので4)、そのような気圧配置パターンの日にはあらかじめ脱水に気をつけることも予防策になりうるのではないかと考えられます。

脱水予防法は、1日三回の規則正しい食事と、適度な水分補給が大事です。ただし、水の飲みすぎは夜中に何回もトイレに起きてしまうばかりでなく、水中毒などを引き起こすこともあるので注意が必要です。また、腎臓や心臓の病気をお持ちの方々は飲水制限があるかもしれないので、必ずかかりつけの先生にご確認ください。

引用文献

1)高橋貴美子ら.心原性脳塞栓発症における脱水の影響.脳卒中14: 606-612, 1992. doi: 10.3995/jstroke.14.606

2)Li SS et al. Dehydration is a strong predictor of long-term prognosis of thrombolysed patients with acute ischemic stroke. Brain Behav 7:e00849, 2017. doi: 10.1002/brb3.849

3)福永篤志ら.脳塞栓と脳血栓の発症に関する生気象学的検討.日生気誌57(4): 127-133, 2021. doi: 10.11227/seikisho.57.127

4)Fukunaga A et al. The onset of cerebral infarction may be affected by differences in atmospheric pressure distribution patterns. Front Neurol 14: 1230574, 2023. doi: 10.3389/fneur.2023.1230574

(文責: 福永 篤志)

対象診療科

脳神経外科

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