鼠径へルニアとは

　鼠径（そけい）ヘルニアとは、お腹の中の腸や脂肪などが足の付け根（そけい部）から皮膚の下に飛び出してしまう病気です。「脱腸（だっちょう）」とも呼ばれます。小さなお子さんから高齢の方まで幅広く見られ、特に男性に多いのが特徴です。初期には立ったときや咳をしたときに、鼠径部にふくらみを感じることがあります。痛みを伴うこともありますが、無症状の場合もあります。自然に治ることはなく、進行すると腸が締めつけられて緊急手術が必要になることもあります。治療は手術が基本で、最近では体に負担の少ない腹腔鏡手術も行われています。

鼠径ヘルニアの原因

1. 小児のヘルニア
   　先天的なもので、通常は生まれる時に鞘状突起（しょうじょうとっき）という袋が閉じて産まれてくるのですが、稀にこれが閉じずに産まれてきてしまう子供がいます。すると泣いたりした際に鼠径部がふくらみます。
2. 大人のヘルニア
   　人間は立って生活しています。すると内臓は下向きに力がかかります。年をとって組織が弱くなると解剖学的に一番弱い部分に負担がきます。鼠径管（睾丸へ続く管）が緩んで広がってしまうものを外鼠径ヘルニア（間接ヘルニア）。鼠径管は大丈夫でもその脇の腹壁が裂けてしまうものを内鼠径ヘルニア（直接ヘルニア）といいます。
   　また太ももがふくらむ大腿ヘルニアや、会陰部がふくらむ閉鎖孔ヘルニアなどもあります。

診断

　通常は視診、触診にて診断します。当院ではさらに腹臥位（うつ伏せ）でCTスキャンを施行しヘルニアの診断に役立てています。

治療

組織が緩んだり裂けたりしたものですので薬では治りません。手術が基本です。

1. 腹腔鏡手術
   　臍を含め数箇所に小孔を開けて、腹腔鏡という細いカメラを挿入し、気腹と言ってお腹の中を炭酸ガスで膨らませ、モニターを見ながら鉗子という細い器具を使ってヘルニア門（穴）をメッシュという人工の膜で塞ぎます。
   
   
   

   メッシュ貼付時		腹膜閉鎖

   
   
   
2. 前方アプローチ
   　鼠径部のはれている部位を切開し筋肉を避けて、ヘルニア門をメッシュで塞ぎます。体の前側から行うため前方アプローチと言います。
   
   
   
3. 小児の手術
   当院は小児外科の医師も勤務しており、小児のヘルニア手術も行っています。
   
   

　当院では年間１００例を超えるヘルニア手術を行っています。豊富な手術経験と高い技術力をもとに、安全かつ確実な手術を提供できるよう日々努めております。まずはお気軽に外来へお越しください。

（文責：木全　大）