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脳腫瘍

脳腫瘍

はじめに

脳腫瘍というと、「不治の病」と思われるかもしれませんが、実際はそうではないことが大半です。近年、ナビゲーションシステムをはじめ、様々な手術補助機器が導入されて、より安全かつ確実な手術が可能となりました。悪性脳腫瘍(とくに悪性神経膠腫)に対する化学療法(薬物療法)の効果は、15年前と比較して向上してきています。

このページでは、脳腫瘍と診断された患者様やご家族、お知り合いの方々などのために、脳腫瘍について簡単にわかりやすく解説いたします。

なお、なるべく専門用語を避け、平易な文章を心掛けていますので、学会で議論になっているような難しい問題には深く踏み込んでおりません。また、当院では設備や人員などの都合上、最新の専門的な治療は大学病院等の専門施設に依頼することがございます。あらかじめご了承ください。

総論

1.脳腫瘍の種類と頻度

頭蓋内に発生する腫瘍を脳腫瘍と呼びますが、脳腫瘍には、頭蓋内の組織から発生する「原発性腫瘍」と、頭蓋外の悪性腫瘍(癌)から頭蓋内へと転移する「転移性腫瘍」があります。

発生頻度は、それぞれ 1万人に1人程度 といわれています。

2.原発性脳腫瘍の種類

原発性腫瘍のうち、最も多いのはグリオーマ(神経膠腫「しんけいこうしゅ」)です。良性から悪性まで、タイプは様々です。

次に多いのが髄膜腫(ずいまくしゅ)で、以下、下垂体腺腫、神経鞘腫、頭蓋咽頭腫などが続きます。

成人に多いのが、神経膠腫(とくに神経膠芽腫)、髄膜腫、下垂体腺腫、神経鞘腫、転移性脳腫瘍などで、小児に多いのが、髄芽腫、頭蓋咽頭腫、胚細胞腫などです。

各論では、神経膠腫(グリオーマ)、髄膜腫、胚細胞腫について取り上げます。

3.脳腫瘍の診断

1)症状

けいれん発作や、神経症状(片麻痺、言語障害、視野障害、聴力障害、精神症状など)、早朝時の頭痛や嘔吐などが比較的多い症状です。歩行時のふらつきやめまい、物忘れなどの比較的軽微な症状のこともあります。もし、症状に改善がみられず、徐々に進行するようであれば、一度、以下のような画像検査を受けられてください。

2)画像診断

画像検査の中心は、頭部CTあるいはMRIです。

CTは、検査時間が数分と短く、大抵、受診したその日に検査ができます。X線を照射し、画像がMRIよりも粗く、血管の病変は診断できないといった限界はありますが、スクリーニングとしては非常に便利です。

一方、MRIは、検査時間が約30分と比較的長く、通常、受診したその日には検査ができず予約制となりますが、X線による被爆がなく、いわゆる精密検査であり、画像解像度が高く、小さな病変や血管病変も見つけることができます。

CTかMRIのどちらを最初に行うかは、症状や診察結果などの状況により変わってきますので、多くの場合は診察した医師の判断で決定されます。

また、造影剤を点滴してCTもしくはMRIを撮影することによって、腫瘍の中には造影剤が取り込まれて写るため、確定診断に役立ちます。まずは造影剤を使用せずにCTもしくはMRIを撮影した後に造影剤を使用して撮影することがよくあります。

3)組織診断、遺伝学的診断

画像診断で脳腫瘍の存在が疑われたときに、画像だけでほぼ診断がつく場合もありますが、確定診断は実際にその腫瘍組織を取り出して行います。顕微鏡で直接見て行う診断を組織診断といい、病理専門医が診断を行います。また、近年は遺伝子異常の場所や組み合わせと腫瘍の性質との相関が次第に解りつつあるため、取り出した腫瘍組織の遺伝学的検査・診断を行う方法が併用されるようになり、この場合は大学または専門業者に依頼します。

腫瘍組織の取り出し方として、ほんの一部をつまんで取り出す手術を「生検術」といいます。脳の深部に腫瘍がある場合や、少しでも傷つけると後遺症が出てしまう重要部位(症候発現部位といいます)が腫瘍周囲に存在する場合など、腫瘍を一度に全部摘出することが難しいときに生検術を行い、摘出した組織により確定診断を行います。

4.脳腫瘍の治療

1)手術

脳腫瘍は、正常な脳細胞ではない「不要な異物」ですから、手術で取り除くのが最も合理的な方法です。脳は、頭蓋骨という容器の中に入っていますので、脳腫瘍がどんどん大きくなってしまうと、正常な脳の行き場がなくなり、圧迫されて様々な症状が出現するのです。ですから、正常な脳を助けるためにも、脳腫瘍を手術で摘出することが重要です。

もっとも、脳腫瘍を完全に摘出することが難しい場合もしばしばあります。

完全に摘出しようとすると、周囲の正常な脳や神経組織を犠牲にしてしまうことがありますし、また、解剖学的に全摘出が不可能な場合もあります。

したがって、原則として全摘出を目指しますが、場合によっては部分摘出あるいは一部摘出(生検術)にとどめて組織診断を行い、その診断結果に応じて以下のような後療法を追加することがあります。

2)放射線療法

手術の後に続いて行う後療法の代表的なものです。通常は、取りきれなかった腫瘍を縮小あるいは消滅させたり、再発を予防するために行ったりしますが、手術が不可能な場合には最初に施行されることもあります。

放射線を、腫瘍を含んだ脳に照射すると腫瘍を栄養する血管が次第に消滅し、腫瘍は壊死に陥ります。腫瘍組織自体も、腫瘍細胞の分裂が抑えられて壊死に陥るようになります。

近年では、ガンマー線を腫瘍組織に集中照射する「ガンマーナイフ」や、X線を分割して集中照射できる「サイバーナイフ」による定位放射線治療が比較的多く行われるようになりました。また、照射野内の放射線の強度を変化(変調)させて、治療に最も有効な方法で照射を行う強度変調放射線治療(IMRT)という方法もあります。

3)化学療法

薬剤(抗悪性腫瘍薬)による治療法です。注射と内服が中心ですが、近年は、術中に腫瘍摘出腔に貼り付けるものもあります。腫瘍のタイプ(病理組織や遺伝子異常)により薬の効果が異なりますので、最も効果が高まるように患者様個人個人に合わせていろいろな薬を使い分けたり、複数の薬を組み合わせて使用したりします(個別化治療)。

ただ、薬剤には通常、副作用が出現する可能性があります。主なものは、嘔気・嘔吐、食欲不振、脱毛、白血球減少(感染しやすくなる)、血小板減少(出血しやすくなる)などです。

4)免疫療法

人間の免疫反応(体内異物を排除しようとする反応)を応用した治療法です。インターフェロンの注射などが以前から行われてきましたが、近年はとりわけ悪性腫瘍細胞を攻撃する免疫力を高めたり、腫瘍が成長するために必要な血管新生を抑制する免疫を高めたりする方法もあります。

5)その他

温熱療法や遺伝子治療、ウイルス療法などの他、種々の先進治療が研究段階にあります。

われわれは、多くの場合に以上の方法を組み合わせて治療を行いますが、施設や機材が無いために当院では行うことができない治療法(ガンマーナイフ、サイバーナイフ、IMRT、免疫療法、遺伝子治療など)が適している場合もあります。そのような場合には必要に応じて患者様・ご家族と相談の上、協力他施設に紹介の上で治療を受けていただいております。治療後は通常、当院と、治療を受けられた施設の双方で経過観察を行います。

各論

今回は、神経膠腫(グリオーマ)、髄膜腫、胚細胞腫について簡単に解説いたします。

1.神経膠腫(グリオーマ)

1)特徴

脳実質のグリア系細胞から発生する原発性腫瘍です。周囲の正常脳組織の中へと浸潤しながら発育するという特徴があります。したがって、すべてを摘出するのは困難な場合があります。

2)分類

比較的良性のものから悪性のものまで、タイプは様々です。

WHOの分類に従って、悪性度をグレード1から4までの4段階で評価します。グレード1が最も良性で、グレード4が最も悪性となります。

  • 主なタイプのまとめ
    • 星細胞腫・乏突起膠腫:比較的良性。
      成人は大脳、小児は小脳に多い。グレード1または2。
    • 悪性(過形成性)星細胞腫等:悪性。成人の大脳にできる。グレード3。
    • 神経膠芽腫:最も悪性。成人の大脳にできる。グレード4。
    • 髄芽腫:小児の悪性腫瘍。小脳にできる。グレード4。
    • 上衣腫:良性と悪性がある。脳室の上衣細胞から発生。
3)予後

統計により異なりますが、発症してから5年後の生存率(5年生存率)をみてみますと、良性であれば60~70%以上、悪性の場合は10~30%程度とされています。

予後を左右する因子として、腫瘍組織型(分裂能力など)、染色体や遺伝子異常の組み合わせ、年齢(高齢であるほど予後不良)、術前の症状(軽いほど予後が良い)、手術による摘出率(摘出率が高いほど予後が良い)などがあります。

また、最初は良性であったものが、後に悪性に変化してしまうこと(悪性転化といいます)もあります。この点が、グリオーマに対する治療の難しさの1つの原因となっています。

2.髄膜腫

1)特徴

髄膜という、脳の表面を覆う膜から発生する腫瘍です。女性に多く、女性ホルモンとの関係があると考えられています。

神経膠腫(グリオーマ)とは異なり、脳の中にしみ込むように増大するということはまずありません。2cm以下の小さいものであれば、脳を圧迫することは少なく、通常、無症状です。脳ドックなどで偶然発見されることも増えてきましたが、通常は良性ですので、小さければそのまま外来で経過観察することも可能です。ただ、血管が豊富なことが多く、しばしば徐々に増大することがあります。

当院で最も多く治療されている脳腫瘍です。

2)症状

腫瘍が大きくなり、脳や神経を圧迫するようになると、頭痛や嘔吐、手足の麻痺、視力障害、聴力障害、めまい、てんかん、歩行障害などといった症状が出現することがあります。症状がある場合には、症状の回復と、さらなる進行を食い止める(最も進行した場合は救命の)ために、治療を検討します。

3)治療法

治療法は、原則として手術です。通常、放射線治療や化学療法などは行いません。

手術は、腫瘍の場所、大きさ、患者様の年齢などを考慮して、どのように行うべきか、最善の方法を検討します。血管撮影を行い、腫瘍を栄養している血管を閉塞させることもあります。通常は良性ですので、完全に摘出できれば再発することは極めて少なく、予後は良好です。部分的な摘出でも、症状が回復して予後は良好なことが多いです。

ただ稀に、短期間で再発・増大してしまう悪性タイプ(過形成性など)があります。組織診断で判明します。その場合には、再手術や放射線治療の追加を検討します。

3.胚細胞腫

1)特徴

胚細胞腫とは、生殖器(精巣、卵巣)由来の腫瘍群の総称ですが、なぜか脳内に原発して発生することがあります。先天性であり、脳内では松果体(しょうかたい)という脳の真中後部や、トルコ鞍上部(脳の真中前方寄り)にできやすく、脳腫瘍全体の3%程度を占めています。約7割の人が、未成年のうちに発見されます。男性が70%以上です。組織像が多彩で、様々なタイプの腫瘍があります。約半数は放射線治療が奏功するため良性と言うこともできますが、未熟で悪性な腫瘍もあります。

2)症状

腫瘍の発生場所により、症状は異なります。

松果体に発生すると、水頭症を合併して頭痛や意識障害を起こしたり、上方注視麻痺といった眼の症状が出やすくなったりします。鞍上部に発生すると、尿崩症(尿が1日で3リットル以上たくさん出る状態)、視力・視野障害、下垂体ホルモン障害などが出現することがあります。

3)治療法

脳腫瘍なので、手術して完全に摘出できればよいのですが、胚細胞腫の場合、手術をすると腫瘍細胞を周りに散らばしてしまい、将来的に脳内や脊髄内に腫瘍細胞が広がってしまう(播種といいます)可能性が高くなります。もちろん、他のタイプの脳腫瘍(たとえば、グリオーマなど)との鑑別が難しい場合には、手術や生検術を行い、組織診断を行う必要があるかもしれませんが、手術や生検術にも一定のリスクを伴います。幸い、胚細胞腫は、放射線治療と化学療法の両者を併用することで治療が奏効することが多いので、手術を行ったうえで放射線療法と化学療法を行うのか、手術をせずに放射線療法と化学療法を行うのかについては、個々の患者様ごとに最善の治療法を検討する必要があるでしょう。

予後は、最も多いタイプのgerminoma(ジャーミノーマ)は、10年生存率が80%以上と良好ですが、胚細胞腫の中には悪性タイプもあります。腫瘍タイプごとに放射線量・範囲と抗がん剤の種類・投与量を組み合わせて治療を行うこととなります。

おわりに

もし、脳腫瘍に関するご相談や、診察や治療をご希望の場合には、当院脳神経外科外来をお気軽にご受診ください。
誠心誠意、対応させて頂きます。

(文責:福永 篤志)

対象診療科

脳神経外科

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